「うわ、晴れだと思ったら騙された!傘持ってねーし!!」

秋の日、欺く(あざむく)ように天気雨が降った。おばあちゃんが『狐の嫁入りやなあ』と言っていたのを思い出す。

傘を持たない奴らが慌てているのを横目に、僕は折り畳み式の傘を取り出し開く。

(持ち歩いてた甲斐があった)

帰宅部の僕は友達と別れ、一足先に家へ向かって歩いた。

いつもの帰り道を黙々と歩く。ズボンの裾に、水溜まりの雨水が染み込んだ。

しんとした秋の空気を吸い込み、空を見上げた。