・・・彼女だ。
セミロングの黒い髪をポニーテールにして、うちの学校の制服に身を包んでいたが、それがついこの間出会ったばかりの女の子であることはすぐに分かった。
「雨宮玲衣です。両親の仕事の関係でここに転校することになりました。よろしくお願いします」
挨拶のテンプレートになぞらえて、彼女は自己紹介したあとお辞儀をした。
ピンと伸びた背筋がきっちり45度折れ曲がる姿には、教室にいるほとんどの生徒が見惚れていたことだろう。
「えー・・・雨宮は、たまに家庭事情で学校に来られないことがあるだろうと思われるので、皆配慮してやるよーに。何か質問は?」
「はあーいせんせー!」
「なんだ、濱田」
一人の男子が手をあげた。