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「へえー、く・・・陽向くんっていう名前なのに、雨の日が好きなんだぁ。反対だね」
「うん」
「あたしは晴れの日、好きだけどなあ・・・」
「君も反対だったりして」
「ピンポーン」
僕の嘘をあっさり信じた彼女は、僕に謝ったあと改めて名前を訊いた。
そのあとの会話はあまり覚えていないが、初めての・・・いや、二度目の会話としては自然で、それは《僕を忘れていた》彼女が《元の関係》に早く戻したいからだろうと思った。
「・・・ねえ、あたしの名前、知ってるよね?」
「・・・・・・」
(・・・きたか)
彼女が、自分の名前を呼んでくれないことを不思議に思うのは時間の問題だった。
僕は、用意してあった答えを口から出す。
「うーん、僕も忘れちゃったんだよなあ」
あくまでも冗談だとわかる口調で言うと、彼女も「ひどーいっ」と笑った。
こう言えば、『知り合ったばかりだったから名前を知らないんだ』と言うより親密な関係だったという設定になるし、その場の空気を崩さないですむ。
それに嘘だとばれにくいだろう。