「私に手紙なんて誰だろ」
「恋に直接渡せない奴なんて俺認めない!」
「そーだそーだ!」
「まぁいいや。後で見よっと」
「えぇ〜俺たちも中身気になる」
「あとでね」
「「ぶー」」
なんだかんだ言って仲のいい剣と新は2人して口を尖らせている。
手紙にしては少し分厚い黒の封筒。なんとなく、今は開けないでおいた。
「次どこ行く?」
「はいはいはい!お化け屋敷行きたい!!」
「絶対嫌よ」
「恋の嫌いなものくらい把握しとけよバーカ」
「うるせえシスコン!」
「俺は恋の好み全部把握してるだけですー!」
「クソー!!」
なにかにつけてずっと喋っている剣と新を、何も言わずに見ている恵と右京。
もう保護者にしか見えなくなってくるよね
「恋」
「なに?右京」
「あっちにワッフル売ってた」
「行く。行こ。早く行こ」
大好物のワッフルがある事を教えてくれた右京に速攻で食いついた私は、剣と新にドヤ顔をしている右京を見なかった事にして歩き出した。
「恋待ってよー」
「恋たん早いよ〜」
「恋さん1人にならないで下さい」
「ワッフルなくなっちゃうでしょ!」
あ、ワッフルのいい匂いがしてきた
初めての日本の文化祭に浮かれて楽しんでいた私は、気づかなかったんだ。
文化祭中、誰かにずっと見られていたこと。
右京がそれに目を光らせて警戒していたこと。
そして……"誰か"から貰った黒い封筒の中身が、この後運命を変えることになることも。
なにも、気づかなかったんだ。