スコンッ。

小気味いい音がし、2人の頭に紙くずが直撃した。


「いっつ……」

頭をさする俺に対し、朱音は丸めた紙を開いて差し出してきた。書かれていたのは、




『前、向け。』




「……。」

ぎこちなく前を向いた2人は鬼が降臨したらこんな感じかと考えていた。


「……今、学級会中。……ちゃんと、参加、する」


コツ、コツ、コツ、と黒板を叩きながら、副委員長の芽愛がこっちを見ていた。
相当ご立腹なのが見てとれる。

「……わ、悪い……」

「めあちゃんごめんなさーい」

「……次は、チョーク」

「うええ?!めあちゃん それはかんべん~」


「あーはいはい。そこまでそこまで!」

脱線しかけた学級会を引き戻すように、委員長の秋也(あきや)がパンパン手を叩いた。

「芽愛は人に物投げない。紅(こう)と朱音は話聞いてたか?」


もちろん。


「聞いてなかった」
「ごめん あっきー」


「……そんなこったろーと思った。
うちのクラスは『幸せの王子』の劇をアレンジ版でやるんだよ。それの役決めに入ってたんだ」

で、2人が話聞いてなかったから、芽愛が思いの丈をそれに込めたわけ。

と紙を指差して秋也は苦笑いした。