「俺は出来ないとかいう言葉は嫌いだと言っただろう。その使いづらい物のコストをダウンさせるのが大田さん達の仕事だろう」

「だからって、可能なことには制限があって…!」


バラバラなサイズでもいいなら何とかなるのかもしれないけど、そんな甘いことを言っても納得はしてくれないだろうと思う。


(後からもう一度直談判に出てみる?その方がわかってくれるかもしれないし)


そうしてみるか…と腹を括り直した。
このイジワルな男に頭を下げるのは癪だけど、仕様がないことだってある。




「今日は先に帰っていいよ」


ゆとりちゃん達にそう言って、一ノ瀬圭太の元へ向かった。
岡崎さん達販売部と話し合いを終えた彼は、私が側に寄ると微笑んだ。


「何?」


ニヤッと笑ってる顔からは、流石にイケメンのオーラが漂う。
その顔にパイを投げてやりたい様な気持ちを抑えながら、「話があるの」と伝えた。


「タイルのこと?」


ちっ。推測済みか。


「そうよ、お願いだから諦めて欲しいの」


タイルの需要は最近ではほぼ無いに等しい。
田舎の住宅でもユニットバスが進んでいて、水周りにタイルを使用する家だって稀になってる。


「私が言ったことではあるけど外壁としてタイルを貼るのなんて難しいのよ。一ノ瀬君の拘りはわかるけど、コストがかかり過ぎてしまう」