単なる同級生以外の付き合いもないし、あの抗議の電話を掛けて以降、声だって聞いてもないと言うのに。


「照れくさいのはわかるよ、大田さん。相手はビッグなデザイナーだもんね」


高木主任の声に呆れる。


「私の話聞いてました?何もないと言ってるでしょーが!」


それでなくてもまだオフィス内ではこっそりと囁かれて困ってる。
私が一ノ瀬圭太と同級生だと弁解しても、なかなか噂は撤回されない。


「これじゃ私、彼氏もできないじゃないの!」


泣き真似をすると皆が笑った。
そんな感じで部署の方もまとまり始めてた。


資材のコストダウンはまとめ買いという作戦に出れば安く卸してくれるメーカーさんも見つかりだした。

でも、問題はやっぱりタイルと瓦で、なかなか思うようにコストの削減までは図れない。


タイルを一枚一枚手作りしてる工房にも足を運んでみた。
色や形がそれぞれに違うタイルは綺麗だけど値段も高いしコストもかかる。


「幾らオプションだからと言ってもこれを使うのは無理そうね。外壁材にここまでのお金も掛けれないわ」


キラキラと光るタイルを手に諦める。
残念だけど仕方ない。
光沢のある美しさは格別だけど、ここはシートタイプのものを使用して誤魔化すしかない。


(これであの一ノ瀬圭太がオッケーを出してくれればいいんだけど…)