耳慣れないと思ったのに、妙にしっくりするような気がした。


少しだけ嬉しくなって、側に立つ彼に少しだけ近付いてみる。


親切にも対応を示してくれたこの人を、悪い人ではないかもしれないと思ってしまった。



そうして、気付いてしまったのだ。


彼の本当の危険性に。


軽くて暖かな布団を剥いで、深く深く沈むくらい柔らかなベッドから身を乗り出した時に。


微かな重みと異物感を足に感じて、私は絶望する。



細くて小さな、けれど確かにじゃらりと音のするその、私を逃がすまいとするように掛けられた枷の存在に。




ベッドの下でそれが幾十にも輪を作っていることから、相当長いものだと推測される。


少なくとも、この広い空間の中を自由に動き回れる程度には。



「これ、は……なに…」


もう既に分かり切った答えを求めて、恐る恐る彼の顔を見上げる。