腕に残る無数の切り傷。
刃物を側に置いておかないシュウの計らい故か、この傷が増えることはない。
見ればすぐに分かる。これは、過去の傷だ。
現在進行形で増えているのは——
ちらり、と湯に沈む自身の体に目をやった。
水面上でも窺える、目に余るほど刻まれた、数え切れない“それ”。
——引っかき傷、だ。
どういう経緯で付くのかははっきりせず。
けれど、これを付けているのは紛れもなく私自身に違いない。
と、いうのもどうやら、私に傷付けている自覚というものがないようで、気付いたら増えているのだ。
そんな曖昧なもの。
いわゆる『自傷』に匹敵するのだろう、けれどその間の記憶は全くない。
厄介なことに、丸々抜け落ちているのだから驚愕の至り。
見るのも痛々しいけど、それはまだ大きな問題ではない。