それは流石に、物としての尊厳が問われる問題のような気が……。
たらり、冷や汗が流れる。
「い、いいいりますいります!ぜひ私にくださいっ」
「そう?なら良かった。やっぱり必要なものだね」
舞い戻ってきた時計を大事に両腕で庇うように包み抱く。
危なかった……。
ほっと胸をなで下ろす私に、くすりと小さく笑ってシュウは言う。
「やっぱりアリサは優しいね」
……うん?
もしかして私、良いように丸め込まれています?
「まさか、騙し——」
「どこに置こうか?見栄えがする方が良いよね」
き、聞いてない。
それとも聞くまいとしているのか。
どちらにせよ、やられたと思わざるを得ない見事な逸らし術だった。