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「じゃあ行ってくる」
かけられた声に弾かれたように側に寄る。
「行ってらっしゃい」
まるで囚人と看守のような関係でありながら、不自由は何もない。
出来上がったおかしな図でさえ、自然な日常の一部になりつつある今日この頃。
いつものように出かけるシュウを見送って、腰掛ける。
一人になるその間の、脱出ルートを探す頻度は日に日に減少傾向にあった。
もちろん今日も確認などしない。
それは単に、逃げられないと諦めているからという理由だけではなかった。
むしろそれは、私の身に起きている変化を正当化させる名目上の言い訳であり、重要度としては多くて4割といった感じだった。
本当のところは悟ってはいけないのだと律しても、常に私の中で大きくなる。
私は彼を放ってはおけないのだと。