「友達じゃない」
ぴしゃりと言い放つ。
不機嫌を隠さない私を、アサヒは頭を撫でて宥めてくれる。
頭を撫でられるのは、もはや日課みたいなものだ。
全然嫌じゃないし、むしろ大好きだからされるがままに大人しく撫でられる。
そうしていると、段々とイライラが収まってきた。
「さっきの男はアリサにとって害があるもの?」
私が落ち着いたのを見計らって問いかけてきたアサヒに、ぎくりとした。
アサヒの目がギラリと光ったように見えたのは、気のせいじゃない。
だから私は慌てて言葉を返す。
「……害、ではないけど嫌い」
「ふうん、そうなんだ」
表情を和らげたアサヒに、ほっと胸を撫で下ろす。
迂闊なことを言って、アサヒが相手に制裁を加えないかが心配だった。
前科があるから、ないとも言い切れないけど、今の表情を見ていたら大丈夫そうだ。