「なに、見惚れちゃった?」
「……」
思わずため息が漏れた。
どうでもいい人を相手にするのは疲れる。
次の講義場所に着くまで、ひたすら後をついてくるこの男に、嫌気が差した。
*
今日最後の講義が終わって、足早に大学の出口を目指す。
今日はアサヒがこっちまで来てくれる日なのだ。
早く会いたい。
会って癒してもらいたい。
思わずニヤけそうになる顔を引き締める。
門の前には既にアサヒが立っていて、周りの視線を浴びている。
その視線をものともしないアサヒの立ち姿は、すらりとしていて姿勢が良い。
どこをとっても絵になるのはずるい。
パッと顔を上げたアサヒと目が合った。
「アリサ」
微笑みすらも優雅で、眩しいくらいだ。
「アサヒーー」
お待たせ、と言いかけた時。
「あれ、アリサちゃんじゃーん。今帰り?一緒に帰らね?」