「なに、見惚れちゃった?」


「……」


思わずため息が漏れた。


どうでもいい人を相手にするのは疲れる。


次の講義場所に着くまで、ひたすら後をついてくるこの男に、嫌気が差した。







今日最後の講義が終わって、足早に大学の出口を目指す。


今日はアサヒがこっちまで来てくれる日なのだ。



早く会いたい。


会って癒してもらいたい。


思わずニヤけそうになる顔を引き締める。



門の前には既にアサヒが立っていて、周りの視線を浴びている。


その視線をものともしないアサヒの立ち姿は、すらりとしていて姿勢が良い。


どこをとっても絵になるのはずるい。



パッと顔を上げたアサヒと目が合った。


「アリサ」


微笑みすらも優雅で、眩しいくらいだ。



「アサヒーー」


お待たせ、と言いかけた時。



「あれ、アリサちゃんじゃーん。今帰り?一緒に帰らね?」