その頃、ビルの2階のとあるカフェにて。


「甘いね、シロウ」


一人がけの席に肘をついて座り、口元に笑みを浮かべる。


話に区切りがついたのか、歩いていく二人の姿を窓から追う。




シロウの様子を見る限り、アリサの行動に僕が不審を抱いていると思ったのだろう。


確かに、アリサは分かりやすい。


それが可愛い彼女の良いところでもある。


分かっていながら、多少なりとも狼狽してしまったのは不覚だったな。



シロウは、僕が後を追って来ているのではと勘繰り、探していたに違いない。


まあ、全くもってその通りなのだけれど。




僕を探すのなら、周囲を窺い見るだけでは不十分だ。


まるで対策になっていない。


上に目を向けるくらいでないと、警戒するには浅すぎる。



シロウは頭が回って勘も良いけれど、深読みはしない。


なんだかんだ扱いやすい奴だ。