彼は常に、倫理や道徳、世間一般でいう常識から外れていた。
強すぎる想いを守るために、何をするか分からないだけ。
アサヒは私のためなら何でもしてしまうだろう。
もっとも、彼が背徳者であるなら私がそうでないわけがない。
たとえば親が死んだ。
たとえば世界中から忘れられた。
たとえばこの世に二人だけになってしまった。
そんなもの、障害にはなり得ない。
アサヒを側で感じて、ずっと慈しんでいられるなら何があろうとも構わない。
“執着”——強く心が惹かれて、囚われること。
私たちのそれは少し大きすぎるだけ。
なぜ異常だと決めつけられなければいけないのだろう。
否定されるたびに拒絶してきた。
今更、何を悩む必要があるんだろう。