* *
甘い香りで目が覚めた。
鼻をくすぐるその先に、テーブルに乗った小皿があった。
寝転がったままでは中身が見えないと、起き上がろうと身じろいだ私の手を、別の手が掴んで留めた。
「……おは、ようです…」
今の時間は分からないけど、とりあえず先に声をかけてみる。
口をついて出たのは敬語とも取れない、ただ丁寧を心がけて形にしただけの微妙な日本語。
寝起きで頭がぼんやりする所為だった。
おかしな私の言葉に、ベッドに腰掛けた人物はにこりと笑って流すと、私の手を離さないままにもう片方の手を私の腰に差し入れる。
と、そのままご丁寧に起き上がらせてくれた。
ま、まさかこんな事までやらせてしまうとは……。
まったく、至れり尽くせりすぎて返す言葉もございません。
はふ、と変なため息が出て、何だか自分がつくづく間抜けに思えた。