すっかり気分が萎えた私は、自然な動作で座り直して強いお酒を頼んだ。


「一応ここカフェなんだがな。他の客に迷惑だから程々にしろよ」


「分かってまーす」


「本当かよ。居酒屋と勘違いしてねえかお前」というお小言を聞き流して、酒を呷る。



喉にくる辛みがクセになりそうな味だ。


さりげなく、つまめる物を置いてくれるあたり、相変わらずこの人は甘い。



こうなってしまうと、彼はもう来ないのではと危惧してしまう。


いや、きっとそうだ。


そうに違いないと決めつけて、やけ酒を決め込む。


どうせもうすぐ店仕舞いだから、思う存分飲もうか。


軽く意気込んで、一気に流し込む。



——と。




「酔っ払いの相手は進まないけれど、可愛い姫様のためなら尽くしたくなるね」


懐かしい声が耳に届いた。


振り返りもせずに不平を述べる。



「そういう口説き文句は女性を待たせる前にお願いします」