離れようとしても、力が抜けてしまっていて。
完全に竦んでしまっていた。
突然、横抱きにされて有らん限りの力でアサヒの身にしがみ付く。
身を預けるまま連れてこられたのは私が借りているいわば自室。
そのままベッドに横たえられて、髪を梳かれるように頭を撫でられると、ひどく安心した。
どういうつもりなのか。
何の目的があってあんなことをしたのか。
意図はさっぱり理解できないけれど、こうして撫でられるのも久しぶりな気がした。
側に居られることがこんなにも嬉しいことだとは思わなかった。
病院を抜け出た時にも感じた、けれどその時よりも膨れた感情が、まだ完全に戻っていない私の意識に勝る。
「ア、サヒ……」
自然と言葉が漏れ出てきた。