少しずつ、近づいていく。
目の前まで来て、思い出したように身を引こうとするアサヒの頰を両手で包んで引き止める。
「ごめんね、アサヒ。貴方にそんな顔をさせているのは私。苦しませているのも、無理をさせているのも、私。
だから私が責任を取らないとって思ったの」
「……あり、さ……?」
「ねえ、アサヒ」
アサヒのためなら私、なんでもできるの。
関係を終わらせる一言を。
私は躊躇いなく放つ。
「私たちは姉弟ではないから」
「え……」
仮面が剥がれ落ちた。
「だから、分かるでしょう?
お互いがお互いを大切に思っていても、そこで踏み止まれる関係ではないの」
「あ、あり——」
「アサヒ、好き」
時が止まった気がした。
少なくとも私には、そう感じられた。