扉は開いていた。
部屋の中央に佇むのは、会いたくて会いたくて堪らなかった、だけど会うのがどこか怖くて仕方なかった人。
「アサヒ」
何もないよう装っていても、もしかしたら震えていたかもしれない。
一抹の不安を覚えた私は、神経質になっていたのだろうか。
振り返ったアサヒは無表情。
けれどすぐさま貼り付けられた微笑は、彼を守る盾。
道化の仮面は人前では決して剥がれない。
ただただ、悲しかった。
「驚いた。アリサがまさか——」
「いいの、アサヒ」
「え?」
聞き返すアサヒをまっすぐに見つめて、関係の終結を目指す。
そのための一歩を踏み出した。
「もう、いいから。嘘はやめよう?」
「何、を……」