アサヒにしては変なところでヘマをする。
少し引っかかったけど、考えないようにした。
「ところでお嬢さん」
夜中で客がいないからか、タバコを吹かしながら声をかけてきた。
「はい、なんですか?」
ごく自然に返事をした私は、数秒後に目を見開く事になる。
「アサヒが隠した秘密、知りたくないか?」
秘密。
それは、心の奥底に蟠りのように残る不快なもののことだろうか。
私が唯一、救い取れない記憶の欠片だろうか。
それをこの人の口から聞いてもいいのか。
「いいえ、知りたくないです」
答えはノーだ。
アサヒが隠したがっている秘密を簡単に暴いていいわけがない。
そもそも、この人が本当のことを話していると証明もできていないのに。
「どうしてもか?」
頑なに拒む私に、追い打ちをかけるように言う。