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「何から話すか…」


からん、とグラスに入った氷が揺れる。



ここはシロウさんの経営する店。


カフェ『ドルチェ』


意味は「柔和」「甘美な」「優しい」


別用語ではデザートのことを指すという。



現実的でありながら、案外ロマンチストなんだと意外だった。


それを言ったら照れたように怒られたから、もう言わない。


とりあえず話を聞こうと姿勢を正す。


ある程度の話は覚悟していたけれど、最初に放たれた言葉は、この日最も喫驚するに値するものだった。




「俺は、お前ら姉弟の事情はある程度知ってるつもりだ」


頭が真っ白になる。


ある程度、とはどの程度?


どこまでこの人は知っているの?


混乱で情緒不安定になりかけた私を止めたのも、シロウさんだった。