* *
「ねえ、アサヒ」
「ん、なに?」
いささか不穏な状態で、愛しい彼女に目を向ける。
アリサは知らない。
僕が危惧していることを。
「私ね、アサヒが大好き」
彼女はまた、無邪気な笑顔でそう言う。
僕を好きだという。その先を求めてくる。
その度に僕は、感じる痛みを無いものとして彼女に接する。
それが姉弟で居られる唯一の方法。
だから僕も同様に返すのだ。
「僕も好きだよ」
…と——。
けれど今度ばかりはいつも通り……とは、いかないみたいだ。
頬を膨らませてむっとした顔のアリサに微笑みかける。
「僕に言われることがそんなに不満?」
「違うっ。不満ではないの。ただ——」