嫌悪を露わにした私に笑顔を向けて、足早に出て行った。
人の気も知らないあの人は、娘を傷付けているなど、微塵も思わない。
可愛がられていたと思っていたのは、幼少の頃のみ。
成長するにつれて、あの人たちの子供に向けるそれは愛情ではなく、押し付けなのだと理解していた。
元の家を出されて、それぞれで別の暮らしをさせられて、貰えるものは月に一度仕送りされる、到底使いきれない金だけ。
気付いていた、私たち姉弟は。
本物の愛がないことを。
要求されているのは家に必要な人材のみ。
頭脳があれば良し。
人柄が良ければなお良し。
まるで試された試練のように、彼らは私たちに様々なことを学ばせた。
『これがお前たちの役に立つから』と、そう言って。