アサヒは今頃どうしているのだろう。


どこにいて、何をして、どんなことを考えているだろうか。


分かるわけもない疑問。


彼のことだから安全ではあるのだろう。


そう、思うことにした。



——と。


扉の開く音が聞こえた。


まさか……


期待に胸を膨らませたけれど、それも無駄に終わった。



「ごめんなさいね。忘れ物をしちゃった」


カーテンを開けて現れたのは、期待した彼ではない。


母親と、私が呼ぶべき存在の人だった。


あからさまに落胆の色を顔ににじませた私に気付くことなく、その人は棚の上に置かれたハンカチをバッグに仕舞う。



そうして、言うのだ。


「また明日来るからね。いい子にしているのよ」


“いい子に”


いい加減、虫唾が走る。