枷にも、針金の類が効かないことは鍵穴の形状で承知済み。
元々この部屋には無駄なものが無いから、便利な物が落ちているとも思えない。
一見細く弱そうだと見受けられた鎖も、その見た目に反して頑丈に出来ているらしく、重い家具の足を上から落とし込んでも変形する気配すらない。
私とを繋ぐ鎖の先は、窓のないこの部屋唯一の40センチ程度の通気口にはめられた鉄格子に同様、枷で繋がっている。
ちなみに換気扇が回っていて、格子の下から更に蓋がしてあるため、外の様子は確認不可能。
初めの1日にあらかたチェックした以降も探ってはいるけど、脱出の手段は今のところ、皆無と見ていい。
……やはり、突きつけられた現実は大いにへこむ。
無謀な試み……とまではいかないけど、少しくらい抵抗したとして、利益にはならないにしろ、無益にもならなかっただろうに。
それだけが今一番の心残りとも言える。