どこ、とは言わなかったけど。


この部屋から、この病室からと解釈した私は、もしかしたら私を連れて行ってくれるのかもしれないと期待をした。



だから。




「出たい、です」



至極当然のようにそう言うと、アサヒの表情は和らいだ。


なぜ彼は安堵しているように見えるのだろうか。


いささか疑問が浮かんだけれど、すぐさまそれをアサヒの声にかき消された。



「少し、話をしようか」


「話……?」


一体何の、と問うよりも先にアサヒが語りだした。



「昔々あるところに、お金持ちの夫婦の間に子供が生まれました。その子は大層可愛らしい女の子で、家名に恥じないよう相応の教育を受けました」