怖い。恐ろしい。
側にいない彼が恋しくて、切なくて。
ただ、愛おしい。
もう少しだけ。
頑張れはしないけれど、機会を見てもいいかもしれない。
アサヒにあの部屋で出会った当初も、似たようなことを考えていたのを思い出す。
けれどあの時とは状況も心持ちも違う。
今回はそれ以外にないと思えるほど、本気で脱走を考えているのだ。
まずはあの部屋の目算から。
場所の特定をして、ここの構造を調べなければ。
あとは、時間が解決してくれる。
何も今すぐというわけではない。
ある程度が落ち着いたら行動に移せばいいだけ。
よし、と意気込みを露わにしたその時——。
「元気そうで何よりだね。
これは心配しなくても良かったかな」
会いたくて仕方がなかった声がした。