考え出した私の耳に、廊下を歩く足音が聞こえてきた。
それが止んだかと思うと、扉の開く音がした。
再びこちらに近付いてくる気配。
カーテンが揺れて、衣擦れの微かな音がした。
開く、と直感した瞬間。
「アリサ……!」
安堵したような声とともに、何かに包まれる感触がした。
嫌がる隙も与えられない。
「アリサ、アリサ…ぁ……!!」
泣いている?
不快感を感じつつ見上げると、見知らぬ女性が私の頭に腕を回していた。
「本当に良かった」
後ろではまた、知らない男性が胸を撫で下ろしている。
私を部屋に戻してください。
もしくは即刻出て行ってください。
そんな言葉を飲み込んで、問いかけた。
「すみません。貴方がたは誰ですか?」