私の問いに、いっそ気持ち良いくらいの笑みを貼り付けて、彼は言う。
「僕はアリサを救いたい。悪いもの全てから」
再三告げられたのはもう、私を縛る悪魔の言葉。
「けど、そのためにはアリサにはここにいてもらわないと困るから。アリサがここにいるんだという絶対的な確証がないと、僕は安心できない。
だから逃げないようにここに閉じ込める。枷をつけて、扉に鍵をかけて、外界から遮断して」
「……私、逃げな——」
「でも可能性はゼロではない。たとえ0.1パーセントでも確率を減らせるなら、僕は手間なんて惜しまない」
抗議の言葉は即座に遮られて、射抜くような目に見つめられて動けない。
もはや願いでも何でもなく、宣言された、独りよがりな一方通行。
そして、束縛に過ぎない。
仮に彼の言う通り、私達が互いを見知った間柄だとしても、私は何も覚えていない。