『ねえ、早くいこ』
誰かがそう言った。
『いきたくない』
誰かがまた、そう言った。
『大丈夫、大丈夫。
ずっと一緒にいてあげるから、苦しまないで』
——誰にも邪魔なんてさせないよ。守ってあげる。
力強い声。導いてくれる。
子守唄を聴くような安心感。
差し伸べられた手を取り、しっかり掴む。
握り返された手には微かな力が入り、離すまいとする明確な意思、確かな熱が伝わってきた。
それを認めると、ようやく、どちらからとも無く微笑んだ。
怖い。怖くない。
『平気だよ。だって……』
ひとりじゃないから…———。