「なんで、ジュースだと思ったんだ?コレはもう飲むな。没収」
「らめ~。飲むの~。だってお父さんがあたしにくれたんだもん」
「ちょっと待って」
そう言うと翔太は廊下に出た。
 微かに聞こえる翔太の声は
「美樹ちゃんに何を渡したんですか?」
「……」
「渡す袋を間違えたって」
そう話している翔太はこっちに来る気配がない。よし、今のうちかな。そう思うとあたしから取り上げた物を手に取って飲み始めた。うん、おいしい。
しばらくすると、翔太が戻ってきた。
「美樹ちゃん、飲むなって言ったでしょ」
「らって~」
「だってじゃない」
「だってだもん」
「翔太~」
「はいはい」
「ギューして」
「は?」
「い~い~じゃん」
そう言うとギューとしてくれた。
「あたしね、中学の時いじめられてたんだ」
「え」
「いーから聞いてて」
「うん」
「クラスじゃなくて、部活でね。ある日普通に部活に行ったら無視されて…それがどんどんエスカレートしてって」
「…」
「最終的に、毎日死ねって言われるようになって」
「…」
「部活に行くのイヤになっちゃったんだ。でも、これじゃダメだって思って部活に行ったの」
「…」
「行ったら、顧問に来なくていいって言われて。ソレをお父さんに話したら、学校に乗り込んで」
「…」
「で、帰って来たお父さんにウソつき呼ばわりされるわ、頬をビンタされるわ」
「…」
「顧問に話そうと思っても避けられて。で部活は引退までやった」