鈴村に取られちゃうような感じもした。
「あ、そういえば、今日あたしのお父さんが来た」
「どうしてまた」
「あたしの様子を見に来たんだって」
「心配してたんだな」 
「そうなのかな」
「多分ね」
「けど直ぐに帰ったよ?しょうがなく来たのかな」
「そうじゃねぇと思うけど」
「じゃーなんで?」
「ここに俺も住んでるから複雑なんだろ」
「複雑?」
「まぁなんだ。親だしな。しかも、父ちゃんだから尚更なのかも」
「だって、この同居提案したのあたしのお父さんなんだよ?親の考えてることが分からない。しかも男の人の考えてるのは」
「んー、まぁ。そんなもんだろ。俺だって、親の考えてること分からないし、女の気持ちとか分からなもん」
「そうだよね」
「そうだよ。人間喋らなきゃ何を考えてるのか分からないもんだし」
「そうだね。ねぇ、翔太って哲学的なことも話すんだね」
「美樹ちゃん、俺のことどう思ってたのさ」
「女のことなんかのらりくらり…あ、女だけじゃないか」
「おい」
「だって基本他人のことなんてのらりくらりじゃん」
「そうなの?」
「自覚なしか」
「自覚…ない…かも」
「あっても直しなさそうだし」
「人間めんどいから」
「まぁね」
「そんなことより、お腹空いた。ご飯の準備は?」
「温め直して器によそうだけだよ」
「着替えてくる」
「はいよ」
俺は寝室に戻って『ふー』とひと息ついた。
「なんだ。答えは単純だったんだ」
ボソッと呟いた。