「うん、分かった。頑張るよ、じゃーさ、いつお見舞い行くか、曜日決めちゃおっか」
「そうだね、」なんて話してると
「ごめんね、遅くなって」
「よし、じゃー、我が家さらば」
「もう、花音そんなこと言わないでよ、また戻ってくればいいじゃない」
そう言ったお母さんの声に元気はなかった。笑って言ってたけど、今度いつ戻って来られるか、わかんないんだろうね、もしかしたらもう
そう思ったら、もっと家の中ちゃんと見ておくべきだったなんて後悔が生まれた。
「花音、ついたよ」
「はい、座って」
「おばさん、俺、病室まで押していきます」
「そう?ありがとう、じゃー、お母さん、先生に伝えてくるわね」
「ねえ、太樹。私、庭に出たいよ。病室行く前に、庭に出て」
「分かった、でも、すぐ戻んなきゃだよ?」
「うん、分かってる」
「んー、気持ちいーね」
「そうだな、ここ、初めて入ったけどいいとこだな」
「でしょ?
あ、太樹さ、売店に行って、雑誌買ってきて欲しいんだけどいつもの。あっちで買ってくるの忘れちゃってさ、あれないと退屈でしょうがないんだよね」
「分かった、じゃーちょっと待ってて」
私は庭を出て、病院から出た。もっと広い空気を吸いたかった。心臓が悪いから、大きく吸い込めないんだよね。だから庭よりもっと広いところに出たかったんだ。
「愛ちゃん、走っちゃダメよー」
「ママ〜、早く!」
わたしも、結婚して子供ができたらって考えた。そして相手は…やめよう、高望みな妄想は
と思っていると、
「愛!危ない!」
「え、うそ!」
わたしの体は勝手に動いた。車椅子なんて乗ってない。
愛ちゃんであろうその子に信号無視のトラックが突っ込んで行くその方向に。
ドーーーーン
「きゃーーーーーー」
「…い、あい!…大丈夫ですか?…か?」
ごめんなさい、みんな、わたしもう無理、次に目を覚ますのは、、、誰もいない、わたしのおじいちゃんとおばあちゃんがいるところで目を覚ますだろう。愛ちゃんのお母さんの声が途切れた。
私、生まれてきてよかった? 親より先に死んじゃうなんて、どんな親不孝者だよ
お母さんへ
お母さん、ごめんね、お母さん1人置いて逝っちゃってごめんなさい。お父さんと離婚して、女手ひとつで私をここまで育ててくれた、相当苦労しただろうに、私はこの命を無駄にしちゃった。お母さん、泣かないで。これからは1人になっちゃうけど、私はお母さんのそばから離れないよ。お母さんのことずっと見守ってる。
たまに、太樹の家にも顔だしてあげてね。太樹は未来の旦那さんだから