でも、でも、もう、我慢しなくていいんだね?」
「あー、言うの遅くなって、お前のこと苦しめてごめんな、これからはもう苦しまなくていいから」
そこで太樹と私は2度目のキスをした。
あなたがいてくれたから、私は病気以外で苦しむことがなくなった。んーん、病気も少し、治った、そんな気持ちにもなったくらい
あなたが私のそばにいてくれたから、私の元に、私の隣に生まれてきてくれた、大樹がここにいる、こんな奇跡が、人生でいちばんの宝物だったよ
次の日
「じゃー、花音、行こっか」
「うん、お母さん、先、車乗ってるよ」
「はーい、すぐ行くよ!」
「ねえ、太樹、これから、毎日お見舞いだなんて、そんな大変なこと考えなくていい。私は部活も勉強も熱心に頑張る太樹も好きなんだから、頑張ってもらわなくちゃ」
「うん、分かった。頑張るよ、じゃーさ、いつお見舞い行くか、曜日決めちゃおっか」
「そうだね、」なんて話してると
「ごめんね、遅くなって」
「よし、じゃー、我が家さらば」
「もう、花音そんなこと言わないでよ、また戻ってくればいいじゃない」
そう言ったお母さんの声に元気はなかった。笑って言ってたけど、今度いつ戻って来られるか、わかんないんだろうね、もしかしたらもう
そう思ったら、もっと家の中ちゃんと見ておくべきだったなんて後悔が生まれた。
「花音、ついたよ」
「はい、座って」
「おばさん、俺、病室まで押していきます」
「そう?ありがとう、じゃー、お母さん、先生に伝えてくるわね」
「ねえ、太樹。私、庭に出たいよ。病室行く前に、庭に出て」
「分かった、でも、すぐ戻んなきゃだよ?」
「うん、分かってる」
「んー、気持ちいーね」
「そうだな、ここ、初めて入ったけどいいとこだな」
「でしょ?
あ、太樹さ、売店に行って、雑誌買ってきて欲しいんだけどいつもの。あっちで買ってくるの忘れちゃってさ、あれないと退屈でしょうがないんだよね」
「分かった、じゃーちょっと待ってて」
私は庭を出て、病院から出た。もっと広い空気を吸いたかった。心臓が悪いから、大きく吸い込めないんだよね。だから庭よりもっと広いところに出たかったんだ。
「愛ちゃん、走っちゃダメよー」
「ママ〜、早く!」
わたしも、結婚して子供ができたらって考えた。そして相手は…やめよう、高望みな妄想は
と思っていると、
「愛!危ない!」
「え、うそ!」
わたしの体は勝手に動いた。車椅子なんて乗ってない。
愛ちゃんであろうその子に信号無視のトラックが突っ込んで行くその方向に。