「太樹君、15歳の誕生日おめでとう!」
「え、あ!俺、今日誕生日か」
「太樹、自分の誕生日忘れるくらい、毎日大変なんだね」
「そんなことねーよ、見舞い、全然行けなくてごめんな」
「そんなのいいよ」なんて言った私、本当は一度だけでも来て欲しいなんてワガママ心の中で思ってしまった
「でも、花音、よく外出許可もらえたな」
太樹と2人になったとき、そう言われた
「お母さんは、車椅子移動なら問題ないって、先生が言ってたって言ってたけど、嘘だと思ってる。私のこと思って。私にやりたいことやらせたいって思ったんだよ、私が絶対太樹のお祝いしたいって言うと思ったんだろうね」
「そっか、でも、明日には病院戻んなきゃだろ?明日部活行くときに一緒について行くよ。明日は午後からだから」
「本当に?嬉しい!ありがとう」
「あのさ、花音、今から言うこと、本気で聞いて欲しい」
「何?」
「俺、花音が好き」
「え、…でも、わた「体のこと気にしてんだろ?俺よく考えた。同情なんかじゃなく、お前のことずっと好きだった。昔のプロポーズ覚えてっか?あれ、今でも覚えてるし、本気だから。ガキの頃の話だからって、本気にしてねーだろ?」
「太樹、覚えてたんだ」
「忘れっかよ、自分で言ったこと。俺はお前しかいない。お前のこと守りたい。ずっと夢だった医者んなって、お前のこと絶対助けてやる」
「でも、でも、私、太樹がお医者さんになるまでに死…「死なせねーよ、お前は死なない。俺が直すまで絶対死なせねーから。」
「太樹、太樹、私、わたしも、好きなんだよ、太樹なんかよりずっと好きなの、でも、ずっと我慢してきた。我慢して、ずっと苦しかった。太樹の事好きなのに、なんでこんな苦しまなきゃいけないのって、
でも、でも、もう、我慢しなくていいんだね?」
「あー、言うの遅くなって、お前のこと苦しめてごめんな、これからはもう苦しまなくていいから」
そこで太樹と私は2度目のキスをした。
あなたがいてくれたから、私は病気以外で苦しむことがなくなった。んーん、病気も少し、治った、そんな気持ちにもなったくらい
あなたが私のそばにいてくれたから、私の元に、私の隣に生まれてきてくれた、大樹がここにいる、こんな奇跡が、人生でいちばんの宝物だったよ
次の日
「じゃー、花音、行こっか」
「うん、お母さん、先、車乗ってるよ」
「はーい、すぐ行くよ!」
「ねえ、太樹、これから、毎日お見舞いだなんて、そんな大変なこと考えなくていい。私は部活も勉強も熱心に頑張る太樹も好きなんだから、頑張ってもらわなくちゃ」
「うん、分かった。頑張るよ、じゃーさ、いつお見舞い行くか、曜日決めちゃおっか」
「そうだね、」なんて話してると
「ごめんね、遅くなって」
「よし、じゃー、我が家さらば」
「もう、花音そんなこと言わないでよ、また戻ってくればいいじゃない」
そう言ったお母さんの声に元気はなかった。笑って言ってたけど、今度いつ戻って来られるか、わかんないんだろうね、もしかしたらもう
そう思ったら、もっと家の中ちゃんと見ておくべきだったなんて後悔が生まれた。
「花音、ついたよ」
「はい、座って」
「おばさん、俺、病室まで押していきます」
「そう?ありがとう、じゃー、お母さん、先生に伝えてくるわね」