あなたがここにいる奇跡

「え、やだ、暗いの嫌っっ!」
「花音、僕がいるから大丈夫だよ、ね?落ち着いて!」
「嫌っっ!ゴホッッ、はぁ、はぁ、はぁ、イッ、タイ、太樹、心臓が痛いよ、いたい」

「花音、大丈夫?花音!」
ここで私の意識が飛んだ。そう、私はパニックになると決まって発作を起こす。おっきな音にも敏感なんだ。

この時はまだちっさいながら、死ぬかと思ってたんだ
ここはどこ?もしかして天国。
私死んじゃったんだ。まだ、小学生なのに。

私はあの時、真っ白な部屋の中に居たんだ。そこがどこかなんて知らなかった、もし天国だったとしても、誰も一度だけ死んだことがある人なんていない。誰にもその場所がどこかなんて分からなかった。でも、この体の私には天国だとしか思い浮かばなかった。
特に夢なんてなかった。いつ死ぬか分からな私が夢を持ったって、叶うはずがないってずっと思ってたから。
そんなことを考えていると、どこからか愛する人の声が聞こえる。でも、その人の声はもうちょっと高い声だったはず。誰だろと、光がさす方に歩いて行った。


そこで私は目を覚ましたんだ。
私の目の前には、愛する人が………誰?でも確かに、太樹…じゃない?

「誰?」
「花音、俺だよ、太樹」

え、だって私の知ってる太樹はもっと背が低くて、そんな顔立ちしてなかったはず。

「やっと目が覚めたな、花音」

「太樹? 太樹なの?もしかして整形した?」
「なに言ってんだよ。俺は俺のままだよ」

それから太樹は「よく聞いて」と言って話し始めた
私はまだ小学生だったあの日、意識を飛ばしてから目を覚まさなかったらしい。ひどく言えば、植物状態。私にも何が何だかわからなかった。生きてはいるが目を覚まさない。4年ほどこの日まで目を覚まさなかったんだ。不思議な話、こんなこと本当にあるんだろうか。私の体は本当に私のものなんだろうかと、何度も疑ったことだ。

でもここに私はいる。死んではいないみたいだ、大げさに言えば生き返った。
笑っちゃうよね、命はあるのにやっと生き返ったって。みんなが、夏の暑い日、やっとの事で水分を取れた時に「生き返った」とか言うが、それよりもなんとも幸せなことだ



ねぇ、太樹、私があの時、目を覚まさなかったらどうしてた?眠っている白雪姫を心配する王子様のようにキスしてくれたかな。

私は万全ではないが、退院できる体になった。
両親とも話し合い、中学校を見学することになった。その時は太樹も一緒にいてくれることになった。

「ここが俺たちの教室、俺と花音、同じクラスだよ」

「嬉しい」なんて言いながら本当に学校生活なんて遅れるのだろうかと、太樹の話なんて申し訳ないことにほとんど上の空だった。
ざわざわざわ

「ねぇ、太樹、すごいざわざわしてるけどなんかあったのかな。」

「あー、なんか、有名人みたいに、イケメンがいるんだろう、それに女子はみんな食いついてる。」

いや、太樹は気づいてないだろうが、どう見ても女子の視線は太樹だ。

気づいてない、そう言う鈍感なところも可愛いと思ってしまう