淡々とした流れ行く日々に向かって、「ちょっと待ってくれよ」とツッコミたくなる時がある。カチカチと動く時計の針に、そんなことを言ったって問答無用に時の流れを刻んでいくのだけれども、そんな曖昧な何かの対象が、このよくわからない旅路を歩んでいる彼の背中とリンクした。

時計台に、JRタワー、ラーメン横丁にテレビ党。JRタワー以外は全部既に訪れたことのある地だった。行く先々で「へー。いい眺めだね」などと12チャンの旅番組のおっさんみたいにいちいち感想を漏らす彼の姿がうざったく、「てめえはヒトゴロシなんだよ!」とアタシはいつも心の中で嘔吐していた。

彼の出身高校の外観だけ眺めたあと、アタシたちは豊平川沿いをぼんやりと散歩した。長い紐につながられた柴犬が近くを通り過ぎ、「クウン」と彼の膝っ子増をなめまくった。だから、そいつ犯罪者だってば。アタシは何も知らないワンちゃんが、急に不憫に思えてきて、しばらく歩いた後で咄嗟につぶやいた。

「で、どうして札幌に来たのよ」
彼は、ジーンズんひざについた犬の唾液をなでながら言った。
「親孝行しようと思ってさ。居酒屋に、親を連れてってあげるんだ」
「そんだけ?」
「そ、そんだけ。」