「ウーロン茶、買ってきたよぉ」
勢いよく開いたドアの向こうから、同僚の美恵子がコンビニ袋をぶらさげやってきた。美恵子は、雑然としたテーブルの上にアタシの分のウーロン茶を置くと、自分はじゃがりこの封を切ってモグモグやり始めた。
「ありがと」
アタシはそう言って、ウーロン茶のおまけについていたヨガのポーズの小冊子をゴミ箱へ捨てると、口に当ててゴクリと一飲みする。CMでは、綺麗なお姉さんが美味しそうな中華と一緒にガブガブやっていてたけど、そんなこんなでホントにやせれるのかしら。
「ダハ!フェラしてるみたいだね。アンタの飲み方。」
美恵子が陽気にそう言ってきたが、アタシはとても笑う気にもなれなかった。
「アンタ、イサムさんが今度指名するって言ってたよ。ウチの店じゃあ、フェラテクではピカイチだって、リュウさんが推してくれたみたいよ」
美恵子はそう言ってセブンスターのメンソールをひと吹きした。ヤンキー臭い、ニコチンの匂いが狭い室内に充満する。オモテでは、指名ナンバーワンの風俗嬢でも、裏の顔は所詮こんなものなのだ。オトコには、都合のいい顔だけ見せていればいい。少なくともお金がからんでいる間は。