狭い室内を見渡すと、灰皿代わりにしたバケツ麺の容器があったり、両親が送ったのであろう、食料の入った段ボール箱が、ビニールヒモを中途半端に切られたまま置かれてある。洗濯機の上には、これでもかと汚れ物があふれ出しているし、自作だというパソコンからは、ファンが壊れているのかウィーンという危ない轟音が唸っている。シンクの中には、使い古されたスポンジが茶色い泡を放ちながらしぼんでいるし、玄関にはピザやデリヘルのチラシが散在している。おまけに、部屋の壁にはB級ロリータアイドルのバカデカイポスターが貼られてある。教科書と参考書で塗り固められたかつてのガリ勉のおもかげは皆無で、アタシはカチカチと時を刻んでいく、バカデカイ目覚まし時計を眺めながら、時の流れをしみじみと感じてしまった。

時刻は午前11:30。この仕事をして以来、一番のギコチナイ仕事を終えると、アタシたちは、ファミレスでご飯を食べ、「何もしないから」と執拗に漏らす太郎の案内の元、彼の部屋へとやってきた。明日は休日だし、正直暇だった。見た目は草食動物だし、内面も草食動物。口も難そうだし、アタシは久しぶりに一人暮らしのオトコの家を訪れたのだ。