「勿論、姫がもとの世界に戻れるように、その扉というものを探そう。けれど、多くの人の力を費やしても見つからなかった扉だ。きっと時間がかかるだろう。その間、ここで暮らしていればいい。ここにいれば、騎士や踊り子にいつでも会える。吟遊詩人も旅の途中でここに立ち寄るかもしれない。扉が見つかったときに、もとの世界に戻ればいい。僕は、姫に不自由な生活はさせないつもりだよ、どうだい?」

王子の顔は、とても優しくて、きっと彼の言う通り、不自由のない生活を与えてくれるでしょう。さっき食べた美味しいご飯を毎日食べれて、絵もいつでも好きなときに見れます。それは、とっても幸せな生活でしょう。けれど、少女は

「わからない」と答えました。


「わからないとはどういうことか聞かせてくれるかな」

「確かに、ここのご飯は美味しいし、絵もずっと見ていたい。ここの世界の人たちのことを好きになったし、もちろん王子さまのことも好きよ。けれど、ここで暮らすのは違う気がして。どうしていいか、わからない」

「迷っていることは、決して悪いことじゃない。急かすつもりもないし、姫がいたいだけいてくれていいよ」