「昔、姫のようにこちらの世界と違う世界を、行き来する人たちがいたんだ。彼らがどうやってきたのかもどうやってもとの世界に戻るかもわからなかった。けれど、姫とは違って迷い込んだわけではなく、自分の意思でここにきているようだった。だから、すぐに戻っていくんだ。けれど、数年ほど前からそういう人たちが減ってきてね、気づけば誰も来なくなっていた」

「それは、どうして?」

「わからない。最後の旅人は、扉が閉まると言っていたそうだ。その扉がどこにあるのかわからないまま、人は去った。それにこの世界も段々治安が悪くなってきてね。日に日に夜が長くなってきているんだ。夜は、人の心を惑わす。危険のほうが多くなってきているのも原因かもしれない」

「そう、じゃあその扉が見つからない限り、私はもとの世界に戻れないのね」

「悲しいが、そういうことだ。そこで姫に、一つ提案がある。ここで、僕たちと一緒に暮らさないか」

少女は驚き、王子の方を見るとあの絵の中と同じ笑顔で少女を見ていました。