「じゃあ、僕はどうしたらいいの」

「知らないわ。ずっとそこにいればいいんじゃないの」

少女は、後ろを振り向き、そこから離れていきました。
それを見た男は、オロオロしてどうしたらいいのか分かりませんでした。
一旦、彼女を追いかけるべきなんでしょうか。でも、それはここから出るということを意味します。不安で胸が苦しくて、けれど彼女を追いかけたいと、いろんな気持ちと葛藤しました。両腕に抱えたものを落とさないように歩き、彼は見えない壁まできました。壁の向こうは、真っ暗で少女の姿どころか何も見えません。
まだ、恐怖は心の隅っこにいます。けれど、男は意を決して、前に足を一歩踏み出しました。

その瞬間、壁は破れ、空気が流れ込んできました。今までとは違う匂ったこともない冷たい外の空気。やっぱり怖い。戻りたい。帰りたい。
そこから動けなくなった男の腕を、何者かが強く引きました。