「闇は、何が起こるかわからない。狼に食べられてしまうかもしれない」

「けど、ずっとそこにいては体がどんどん潰れていくわ」

「それでも、僕はここにいる」

男は、そこから出ることを頑なに拒んでいました。
「どうして、そんなに出るのを嫌がるの」

「闇が怖いからさ。そこに出てしまうと、大事なものを失ってしまう」

そう言って、男は抱えていたものを落とさないようにぎゅっと抱きしめました。
腕の中から、溢れている何かはキラキラと光っています。

「あなたの大切なものってそれ?」

「そうさ、丹精込めて作ってきたんだ。どれも、素敵なんだ」

男は、嬉しそうに話します。

「これはね、奇術師が魅せるあのわくわくした気持ちを形にしたくて作ったんだ。こっちは、春をイメージしてね。とっても爽やかに出来たんだ。ほら見て。とっても綺麗な青色をしているだろ。どれも、本当に楽しかったんだ」

けどね、と男は続けました。