「それから母は決して自分の恋人と私を二人きりにすることはなくなりました。だけどその……行為が怖くて、彼氏のことが……受け入れられないんです。彼は無理に……しようと、することは……ないんですけど……でも私は……」

途中から息が苦しくなって言葉が途切れる。
それ以上の言葉を紡げなくなって、私は黙り込んだ……。


「思い出すのは、辛いね。でもここで話したことで、君は一歩踏み出したんだよ。大丈夫」
先生の瞳には同情も軽蔑もない。

「次に思い出す時には、自分のことじゃないと思ってごらん。それは映画やテレビの話。君のことじゃない」

次……?
次があるの……?

ママは「辛いことは忘れなさい。思い出さなくていい」って言っていた。

そうじゃないの?

「君の心を軽くする魔法は僕は持っていない。だけど、乗り越える方法を一緒に考えることはできる。……またおいで」
高町先生は柔らかく頷いた。