「及川先輩は外見も性格も素敵なの!」
一応小声で返したけど、心なしか先輩の耳が赤い。
聞こえちゃったかな。

「ふふ、今度食事でもしましょうね。高町さんも一緒に……いいでしょ、留愛」

ママのことだからパニックになって大騒ぎして高町さんに電話したんだろう。
この時間診察の合間なのかな、本当に迷惑かけちゃったよね。

それでもママがいいって言ってくれる人なら、私もちゃんと向き合わなきゃ。

「よろしくお願いします」
私は高町さんに頭を下げた。

「こちらこそ、楽しみにしています」
高町さんは柔らかい笑顔を私に向けて、時計に目をやる。

「午後の診察の時間だから、そろそろ行かなくちゃ。じゃあ、また」
ママも彼に続いて歩き出す。

「じゃあね、留愛」

後ろ姿を見送っていたら、隣から長いため息が漏れた。

「緊張した……」
「ナナと話す以外で、先輩でも緊張することあるんだ」
「…………馬鹿」

またポカリと頭を叩かれた。
私の方は、なんだか緊張がほぐれちゃった。

ママに感謝、なのかな。