教室に戻るとさっき目の前にいた、クラスメイトの神崎くんが近づいて来た。

「マジで七瀬かー。いや、本当に意外だわ」
「……神崎君は、バイトしてるの?」

細い目が特徴的な神崎君が「まぁな」と呟く。
「及川先輩の事、どう思う?」

「もう結構前、あの人バイト先まで来たんだよ。皆のバイト先調べてるみたいだったけど。生徒会長だしすぐに学校にチクられんのかと思ったらそうじゃないし、期待してた分ショックっていうか、がっかりって言うか。でも水島の言う通りだよな。校則破ってたくせに先輩責めるのはどうかって、さっき思った」

私だったらどう思っただろう。
自分がバイトしていてそれを知っている及川先輩が突然学校にばらしたら……信用していた分ショックに違いない。

私が余計なことしなければよかったのに。
本当に悔やまれる。

「でも先輩、一言も言い訳しなかったじゃん。なりふり構わず守りたいぐらい七瀬の事大事なのかって思ったら、なんか、やっぱ格好いいよな、あの人」

「メガネの七瀬に惚れてたってのは、趣味悪いと思うけど」と神崎君が付け加える。

一言多いんだから。
でも……ありがとう。

先輩が私の事そこまで大切に思ってくれてるって事、皆には申し訳ないけどものすごく嬉しいの。

私も先輩に、何かしてあげたい。
今は何も出来ることはないけど……。