「だ、黙っててもらえませんか?」
そんな気はない事はわかってるけど言わずにはいられない。

及川先輩には自分で言いたい。
嘘ついてたことちゃんと謝りたい。

退学にだってなりたくない。
先輩と同じ学校を卒業したい。
あと1年一緒に過ごせるのに。

斎藤先輩は軽い口調で答える。
「いいよ」

……え?
「本当ですか?!」

「ただし、及川と別れろよ。俺の事が好きになったからって言って。そうしたら退学にならなくて済むんだからいいだろ」

……。
…………。

「それは……できません」
桜井先輩が言っていた話を思い出す。
及川先輩の元彼女のこと。

裏切られても信じてたっていう先輩。
私は先輩を裏切りたくない。
私が斎藤先輩を好きだなんて嘘、絶対につきたくない。

「お前がバイトしてることが学校にばれたら、及川だってやばいんだぜ。お前と付き合ってることは皆知ってるから、お前の為にバイトの自由化を実現させようとしたと思われる。自己中で最悪な生徒会長だよな」
「先輩はそんなんじゃ」
「わかってる。でも周りはどう思う?」

私のせいで、先輩の努力が疑われるんだ。
ナナの為に、生徒たちの為に、一生懸命努力してきたのに。

「わかりました。今日……及川先輩に言います。だから1日だけ待ってくれませんか。明日私達が別れてなかったら、ばらしても構いません」
「……わかった」

斎藤先輩は満足そうに笑って「ちゃんと俺の事が好きだって言えよ」と言って部屋を出て行った。