訊きたいことは三つあった。



一つ目は、『どうして兄を殺したのか』ということ。二つ目は、『なぜ自分の子を殺したのか』ということ。三つ目は……『赤ちゃんの右腕はどこなのか』ということだ。



彼女は再度何かを咀嚼し始める。



訊くのは怖かった。たった十五分間で全てを話してくれるかもわからなかった。むしろ、ずっとこのまま押し黙っているかもしれない。



でも、別にいい。何度でも、ここに足を運ぶ覚悟はできているから。



一つ目の問いを投げかける。



「なんで、兄を殺したんですか」



彼女は言葉の意味を確かめるようにゆっくりとかぶりを振り、目を細めた。喉が鳴る。これはきっと、何かを話し出そうとするときの彼女の“癖”なのだ。



「コウイチを殺した理由(わけ)……か。どうして知りたいの?」



以前、美しいソプラノだった声は、まるで老人のように掠れていた。



「……誰も、私には教えてくれないんです。父と母は抜け殻みたいになってしまいました。だから、私がしっかりしないと……」

「そう……まぁ、ミサちゃんが聞きたいなら教えてあげる」



彼女は乾いた唇を潤し、目をつぶった。





「……ただ、二人が羨ましかっただけよ」