面会室の中は、ドラマで見るように一枚のアクリルガラスで仕切られていた。ガラスの前に置かれている椅子に座ると、心臓が意味もなく激しい脈を打つ。



今から私は、兄を殺した人と話すのだ。





刑務官に連れられて、彼女はやってきた。



顔が痩せて、青白い。もともと細かった腕はさらに脂肪が落ちて、まるで骨と皮で構成されているように見える。



さらさらで私の憧れだった黒髪は、艶をなくしてぼさぼさになっていた。やつれた顔に溜まりきった疲れが見える。



でも、やっぱり。
相変わらず、綺麗な人だと思った。



口は固く閉ざされているが、癖なのか、常に何かを噛むような仕草をしている。人を殺して、精神が、壊れてしまっているのかも。



私は十五分間の中で、この人から真実を聞きだせるのだろうか。



――刑務官の隣に彼女は腰を下ろし、面会が始まった。



彼女はごくん、と何かを呑み込むように喉を鳴らしてから、痩せこけた頰をあげて私に笑いかけた。



「久しぶり、ミサちゃん。しばらく見ない間にずいぶん可愛くなったのね。本当に……コウイチに似てる。やっぱり兄妹だもんね」

「ユウカさん……」



彼女は再び唇を結び、ずっと口の中で何かを噛む仕草をする。よくわからない癖も気にはなったものの、私は刑務官の顔色を窺いながら彼女に問いを投げた。



「ユウカさん」



彼女は緩い動作で首を傾げ、笑みを消す。



「私に、あなたがあの日、何をしたのかを全部教えてくれませんか」



刑務官は顔をこわばらせてこちらを見た。彼の視線に気づかない振りをして、私は彼女の光のない目を見つめる。



ごくん。彼女は呑み込む。